12月号の、月間フローリスト(誠文堂新光社)に、ご掲載頂いた、作品写真集、「KIRIBANA」を制作していた時、
大自然と向き合うことが必須だった。
大自然と相反する、自然の命を絶ったもので作る、人間の切り花作品。
その「価値観の違い」をどう調和融合するか、
一緒にこれからを生きていくにはどうしたらいいのか、
というテーマに取り組んだからだ。
ある時、白老のアヨロ海岸へ行った。
作品は、ヤシの木や皮、葉を使ったものだった。
あらかじめ、ベースを構築して運んだ。
気候や天候との折り合いだったので、
カメラマンの中田氏が、事前に幾度も調査してくれた。
3人の調整、
事前準備、数々の計り知れない3人の多大な陰の労力。
他の仕事との時間配分。
気候を考え、3人で迷いながらも
出版社の斉藤専務から、最終GOサインが出て、
自宅まで迎えに来てくださって、たくさんの荷物を積んで、
夜中の2時に白老へ向かった。
現地の天候は風が強く、
朝日の中で撮る撮影のため、
真夜中に真っ暗な中、遠くからの車のライトの明かりで
手探りでひとり、海の中でいけた。
2メートルのヤシの木の構築したものが、
何度も何度も風で倒れた。
黙々となんどもなんども倒れたものを起こして、
立て直しながら、また生け続けた。
作品はどんどん壊れていった。
斉藤専務が手を貸してくれた。
最後には 形が保てなくなった。
この風では何度やっても同じだと思い、
中田氏と斉藤専務にはプロとして申し訳ない気持ちと、
二人の陰の労力に申し訳ない気持ちで押し潰されそうだったが、
「できない」と告げた。
自分の未熟さを恥じた。
後日再度来ることになり、引き返した。
人はなんて無力なのだろう・・
ほんとうに「自然には逆らえない」と、そう思った。
後日、天候を配慮に配慮を重ねて、夜中に再度海岸へ向かった。
今度は海の砂の上で生けようと思った。
「自然にさからえないのならば、逆らわない。現地で即興」だ、と決めていた。
その日は風が前より穏やかだった。
海なので、風はあって当たり前なのだ。
何も考えず、なににもとらわれず、
海と風と自然を感じながら真っ暗ななか、
構築作品を男性2人の手を借りながら
思い切り砂の中に埋めた。
持っていった素材を、感覚を頼りにどんどん大地の中に埋めた。
そして朝日が昇ってきたころ、
即興作品は出来上がった。
それが、この作品だった。
自然と調和するには、なにも考えず、
ただ感じ取りながら呼応するしか術はないんだと、
体感した。
この時私は、その術を、
頭ではなく体で覚えた。
前に行った時より、天候もよく、
カメラマンの腕のお陰で、より美しい、一瞬の写真になった。
このときの作品は「KIRIBANA」の裏表紙にもなっている。
1回目に制作できなかったこと、
自分たちの都合に自然が合わなかったことは、
その時はさまざまな感情や、状況、に合わなくても、
それは「悪いこと」ではないのだと思った。
切磋琢磨して、次に創り上げたものが
素晴らしいものになり、目の前に現れたとき、
そこからたくさんのことを学び、得ることができた。
それをきっかけに、
日常のいろいろなことに、
「善悪」という概念が変化し、
自然体が大切なことのようにも思えた。
いままで花が教えてくれたことはたくさんあり、
なんとなく最近体の中からわきあがり、できたのが
「花を心で創るメソッド」
花から学んだ、会得したことを、人と分かち合うこと。
そんな風に思っている。
今月は22日(月)
19:00~「自然体で生きる」方法を
花から体験で会得しましょう。
お問い合わせはメッセージ、または、
011-867-0003(担当 一之瀬)まで。